素人とのお仕事、すったもんだアレコレ

普段は営業・ディレクター・デザイナーなどプロと仕事をしていますが、個人案件では素人(言い方がよろしくなくてすみません)の人の仕事を請けることも多いです。
あまり知識の無い人と案件を進めていくと起こるアレコレ。晒す目的ではなく今後うまく対応するためのナレッジになればいいなと、大きなことから小さなことまで、すったもんだをまとめます。

ネットプリント会社はなぜ安いか理解して

旧来の印刷会社なら、営業さんがヒアリングしてDTPオペレーターがデータ作成、あるいはデザイナーがデザイン作成し、校正係がキリリと校正し、修正し確認し、校了がでたら印刷オペレーターが(色校出して)印刷・断裁・梱包して……といった工程を通して完成した印刷物が届けられます。
印刷後、修正・校正漏れ、データ作成ミスが発覚した場合、印刷やり直して営業が青い顔しながら再びお届けすることに(DTP経験者はこのトラウマがあるから初心者の印刷データに色々言っちゃうんです)
ネットプリント会社はこの校了の部分まではセルフで作成して入稿します。そのため、データにミスがあって印刷物が失敗しても注文者側の責任として扱われます。再印刷はこちらの実費負担ですね。

長々と描きましたが、安くなった要因の一部は私の技術と経験によるものです。ミスの責任は私たちにあります。完成した印刷物を見るまで「ミスってたらどうしよう……」と不安を毎回抱えています。安くなるための作業と責任はこちらが背負ってるので、「印刷業務進行管理費」として請求費用を乗せさせていただきます!

校正してくれない

Case: 某市民グループの会報の作成

デザイン組んだあと確認用のデータを渡しても文字校正してくれない……! 「重要な作業だから校正はしっかりしてください」と伝えても「見なくても大丈夫、お前を信頼してるから😉」
校正は、信頼している信頼していない、そういう問題じゃないんだよ!
結局、後から文字のミスが見つかり(原稿自体がミスってた)、なぜか私が悪いみたい言われてデータ修正しました。

本当に色校いる?

Case: 知人の名刺作成

例えばネットプリント会社大手のP社では名刺100枚が税込送料込みで950円です。色校はシビアにオフセット&実際の用紙でやるなら6,800円、簡易的にインクジェットでやるなら1,300円かかる料金設定。名刺はオンデマンド印刷だろうから、厳密に完成品の色味を見たいならどっちも微妙ですね。
名刺の色味にこだわりたいとのことで色構成を希望されましたが、上記の説明をしたら値段の違いに「え、なんで?」とムッとした態度を取られてしまいました。どちらかと言うと印刷料金が安すぎるバグなんだよね。
2,3パターン、色違いのデータを作って普通に名刺印刷した方が話が早いかと。

色は揺らぐもの

Case: ショップカード作成

WEBなら各モニターやデバイス、印刷物なら印刷機やそのときの出力で、若干色味に揺らぎが発生します。
経験があれば「そういうもんだ」と受け入れられるんですが、例えばCMYKで数値1くらいずつこだわってニュアンスある色を設定したい人に「そこまでこだわってもあんま意味ないよ」とも言いずらかったり。
デザインデータを書き出したJPGをメールで送ったら、向こうでスマホ端末に共有して確認したそうで「iPhoneで見たら色がバッキバキなんだけど! なんで?」と言われてたことがあります。iPhoneだからだよ。

修正指示が分からない

Case: 市民団体の新商品ラベル

向こうに複数の人たちがいて意見を言い合ってる場合、それらをまとめてから伝えてほしいのに、「Aさんは○○言ってた。Bさんは△△言ってた(Aさんとは逆のニーズ)」と会議の内容そのまま伝えられても知らんがなとしか……。そもそもデザインのスタートの段階で「やなぎさんのセンスにお任せ!」と丸投げされていたので、方向性も把握できていない案件でした。
「バラバラの希望を伝えられても、何をどう修正したらいいか分からない。これじゃ作業できない」と伝えたら、連絡係をしていた人は「私が悪いんでしょ、どうせ私なんか」と不貞腐れてしまいました。その不貞腐れて、いらないから、修正内容とかデザインの方向性を伝えて。。

Case: NPO団体のWEBサイト運用

また、思考を丸ごとメールを送ってくる人もいます。
「あれは××して」
「ん、やっぱ××しない方がいいか」
「□□してみたらどうなるかな?」
「××を一部○○にしよう」
と溜まったメールをさかのぼり、その人の結論は何なのか読み解くのに時間と精神力を持っていかれてしまいました。
これはさすがに「修正内容がFIXしてから一回で送ってほしい」と要望を出しました。

これはプロ相手でもあることですが、そもそも校正用語を理解されてない場合もあります。
勘違いで修正作業を進めるよりも、しつこくても修正内容がハッキリするまでやり取りをしましょう。

修正依頼は1箇所からね

Case: チャリティーイベントのフライヤー作成

同じ人から数日の間に、ショートメッセージ、Facebookメッセンジャー、PCメール、スマホのメール、とバラバラの方法で別々の修正依頼を送ってこられたことが。
修正作業のためにショートメッセージ開いて……Facebookメッセンジャー開いて……PCメール開いて……スマホのメール開いて……、確認作業のためにまたショートメッセージ開いて……Facebookメッセンジャー開いて……PCメール開いて……スマホのメール開いて……。面倒くさいんじゃーーー! 連絡手段は1箇所に決めて!

超特急依頼は断る

Case: 某団体のイベントフライヤー作成

「やあ元気? お願いがあるんだけど(中略)今日一部原稿を渡す。イベント内容は明日までFIXしない。明日中に当日発送で印刷会社に発注して!」
そんな超特急依頼を「向こうも大変だろうな〜」と請けていましたが、私自身の作業時間もガッツリ削られるためデータ作成や発注のミスに繋がってしまいました。そしてその後も当然のように超特急依頼をしてくるように。いやいや、待て。「たいへーん!」じゃないんだよ、大変問題あるのはお前の進行管理だよ、私に皺寄せしないで??
急に連絡が来るから出かけたい予定も曲げなきゃないし、私へのギャラが増えるわけでもないし(何なら払ってくれなかった)、超特急依頼は最初から断るようにしました。
睡眠時間を削ってくるような依頼も断ります。年だから!

起きてるからって仕事させるな

Case: NPO団体のWEBサイト運用

深夜にSNSに書き込むことで「こいつ、まだ起きている」とバレることってありますよね。
「起きてるなら、今すぐ○○直して!」と連絡が来ちゃったことも。こっちは酒飲んで布団に入ってゴロゴロしてたのですが😥 夜中に起き出してWifiとPC立ち上げて修正・更新して連絡して、一旦頭をシャキッとさせなきゃないから眠気は飛んじゃうし……と、これ毎回やられるとキッツイわと気分が凹んでしまいました。
作業のミスにも繋がるし、こういう連絡はその場で反応せず「ごめん、寝落ちしちゃってた!」とかわすようにします。

それは印刷データではない!

Case: 市民活動団体のフラッグ作成

確認用にJPGデータを送るじゃないですか。なぜかそれをそのままどこかの印刷会社に印刷データとして送って印刷してもらおうとされます。で、当然印刷会社から「このデータじゃダメ」と言われて、私の方にしれっと「印刷会社から文句言われたけど?」と連絡を寄越されます。
そうだよ、印刷データじゃないからだよ。なんで勝手に印刷会社に回してんだよ!!!
と、それからはJPGデータを送る際は毎回「確認用のデータです」と申し送りをしています。

紙の値段のさまざま

Case: 知人の作家のカレンダー&ポストカード作成

ペラペラのA4のクラフト紙と厚手の和紙タイプのハガキ用紙、当然値段が違います。
「なんでクラフト紙はこんなに安いのに、和紙のハガキはこんな高いんだ!」と文句を言われたことがありますが、逆になんでそこに文句を言うのか理解ができない……。

レシートを捨てるな

Case: 知人の作家のカレンダー&ポストカード作成

今なら請求書を作成して渡していますが、昔はかかった経費のレシートをそのまま相手に渡していました。相手は一応アーティストというか個人事業主。時々思い出したように財布から一万円札を渡してくれましたが、うーん、渡してるレシートの金額の方が上なんですが?
「レシート確認してる?」と言ったら「俺がレシートを取ってるわけがないだろう(キリッ」 確定申告どうしとんねーーーーん! ダメだこいつ……と距離を置くようにしました。

デザイナーに何でもさせようとするな

写真撮影、レタッチ、イラスト制作、ロゴ制作、ライティング、ディレクション……なんでもできるデザイナーもいますが、できないデザイナーもいます(ここに)。
丸投げすれば魔法のように完成品がお出ししてもらえると思い込んでいる人も時々いまして……。

Case: ヨガ講師の名刺作成

ヨガ講師から「曼荼羅を使った名刺デザインをしてほしい」と依頼を請けました。
「曼荼羅の絵か素材はありますか?」「無い。描いて💖」
練習しましたが、ああいうの付け焼き刃でどうにかなるもんじゃないですよね? スピリチュアルな絵は普段からスピリチュアルな人じゃないと描けないですよ。
結局、「描けません」と依頼をお断りしました。

Case: ショップリーフレット作成

リーフレット制作で、内容はざっくりとしか決まって無い状態でデザインしてほしいと相談されました。
取扱商品は仕入れによってカテゴリごと変動するそうだけど、その場合商品ページってどう構成するのかな? 文章は誰が書くのかな?
相手は微笑みながらこちらを見つめています。無理だよ〜〜〜!

Google画像検索で出てきた画像は使えない

Case: 市民活動団体主催の講演会チラシ作成

「Cさんの講演会をするからチラシデザインよろしく! Cさんの顔写真はGoogle画像検索から取ってきて」ダメだからね! Cさん本人に肖像権はあっても、撮影・掲載したメディアにも使用許諾を取る必要あるよ、と説明しましたが理解してくれず……。その時はCさんが顔写真のデータを送ってくれて事なきを得ましたが。
その依頼人は後日別件で無断で登壇者の顔写真使いまわして怒られてました。学習してくれてればいいけど。

イラストを無断で流用するな

Case: 市民団体主催の音楽イベントポスター制作

私自身、過去にご縁のあった方のお父様(結構著名な作曲家)の曲を扱う音楽イベントがありました。ポスターデザインを依頼され、私もその世界観を理解していたのでイラストを描きポスターを完成させました。
後日、そのイラスト達が縦横比もイジられ、配置もセンスなく変えられた状態で、市民団体の活動報告パンフレットの表紙に勝手に使われているのを発見してしまいます。
なんとその市民団体、著作権どうこうの勉強会も主催しているようなとこで。ええ〜〜〜! 学んでないやん。
事前に言ってくれれば使用許可を出したでしょうが、「無断流用はひどい」と連絡をし謝罪を受けました。

素人の折りは酷い!

Case: NPO団体のリーフレット作成

自分たちで印刷して三つ折りのチラシを作ったときのことです。折り加工の段階で、複数枚重ねて折って折りがグチャ〜とばってる暴挙と、折り機でグチャグチャの折り目を付けられた暴挙と、マジで価値観が違う心無い暴挙に遭ったことがあります。私としては自分の制作物を目の前でゴミにされたようなもんですから怒ってしまいましたが、相手は『何で怒ってるの?』な顔。
(あと、折りはきれいなんだけど手脂が激しくて印刷を汚しちゃう人とか……。本人は悪くないんだけど「あっち行って」と言ってしまいました)
素人に折らせてはいません。折り加工まで印刷会社に頼むか、自分の制作物を守るために自分で全て折るか、どっちかです。

打ち合わせがお喋りで溶ける

作業の打ち合わせなど、実際会う場合でもオンラインMTの場合でも、働いたことの無い人って時間の概念がちょっと自由といいますか、開始から1時間以上その人の個人的なお喋り(朝起きてから打ち合わせ場所に来るまで、天気がどうとか何を見たとか)を聞かされることも。
打ち合わせの時間も請求できるんなら喜んで相槌を打ちますが、普通にタダで聞き役をやる羽目になります。
「私が参加できる時間は○時〜△時です」とか「30分なら時間あります」と先に宣言しましょう。

親しいと未払い回収しずらい

請求書を渡しても支払ってもらえないことも……。こういうとき親しいと請求の確認ってしずらいんですよね😓 単純に支払い忘れのケースと意図的に支払わないケースとありますが、どちらのせよガチ個人でやってるとこに時々あるケースです(経理どうなっとんねんと思いつつ)。連絡するのも気まずいし、連絡しないのも一人悶々とするしで、よくない体験です。
自分の作業代は最悪ボランティアでもいいけど印刷代まで私が被るのは真っ平ゴメンなので、支払いがあやしい人の印刷は代引きで本人に支払ってもらいます。

とはいえ勉強になることも

3歩進んで2歩下がる

「こいつ文句ばっか書いてんな〜」と思われたかもしれませんが、当然ながら私が未熟でなければ回避できたケースもあります。
こういう出来事があると「スムーズに進行するために次からはこう対応しよう」「はじめに○○と案内しとくと先方と共通認識ができていいな」など対策を考るので、自分自身の成長にも繋がります。
また、事前に無理を察知して穏便に断るスキルも身に付きました。
3歩進んで2歩下がるなんて言いますが、2歩下がった経験は次に活かしましょう。次回は横にひらりとかわして、もう下がらなくて済むようになるかもしれません。

意外な視点も◎

普段の作業では「そういうもんだ」とスルーしていることを、「ここ、おかしいよね?」と指摘されることも。
イラレデータをアウトライン取って印刷用にPDF書き出ししたときのこと。テキスト内の「一」や「|」だけが太ってしまいました。印刷しても問題ないと経験で知っていますが、なぜ一部の文字だけ太るのか実際には私は理解していませんでした。確かに見た目おかしいから指摘するよね……。確かに問題ないと相手にも理解してもらうためにはどう説明すべきか……と調べます。


なるほどね、、おかげさまで自分の頭でもちゃんと理解できました。
業界内の常識に染まっていない意見・見方は、学ぶヒントにもなります。

アナリティクスに関しても、各用語を平たく説明できるかやってみると、自分が理解したふりしてあまり理解できていなかった事が洗い出しできて良いです。

最後に

「できまーす!仕事くださーい!」と最初は元気でも、締切近くなってバックれる作業者に振りまわされた経験のある方もいらっしゃるでしょう。そういう方はこの記事を読んで胸糞悪くなってるかもしれません。ごめんなさい。