会社に勤めるなら労働基準法の知識を持とう!

「労働基準法?何それ?」
「マジメか」
「『権利』がどうこう詰められる感じ?」
労働基準法(以下、労基法)と耳にして一般的な反応はこんなところでしょう。なんでやねん。道路交通法を知らずに車で一般道を走らないでしょ? 国が定めた労働に関するルールです。なにも全部覚えておく必要はありません。こういうケースで労働基準監督署(以下、労基署)を頼れるよ、という知識を雑学的にでも頭に入れておきましょう。

この記事の対象者

  • 相手は会社で雇用関係にある
  • 裁量労働制ではない

です。個人事業主のとこでお手伝い、自分が個人事業主として業務委託している場合は、この記事の対象外となります。
法人成りしたての会社では、まだ労基法について理解ができていなかったり、社内規定ができてない可能性もあります(法人成りしても個人事業主の感覚のままって、よくありますよね)。一緒に勉強していきましょう。

労基法について

法律に関する文章は正直難しい! 敷居の低いQ&Aから入りましょう。


基本的に、この法律に反していた場合に労基署に行って相談することになります。

そもそも高校の授業で納税・保障・法律(権利)について教えておくべきかと思うのですがほぼ触れられず、社会に出てからいきなり対応を求められることになります。
ブラック企業に入ってしまった、ハラスメントを受けた、長時間労働、サービス残業……ラッキーな人はこれらの言葉もニュースで聞いたことがあるレベルかもしれません。不幸にしてそういった状況になってしまった場合、精神的にも肉体的にも摩耗しきって、あるいは知識が無いことで自分で証拠を揃えることができず、労働基準監督署(以下、労基署)に相談しようにも窓口で絶望することになってしまいます。

そのためには、法律に反している証拠を集めておく必要もあります。何が反しているのかいないのか、まずは事例から知っておきましょう。

case-by-case

私の知識は古いものも混じってる可能性もありますが、以下自分の経験を交えて軽く触れていきます。

私は基本的にずっとデザイン会社・印刷会社で働いてきたので、それ以外の業種から見ると「そんなこと言われても……」と思われるかもしれません。

証拠は取っておく

証拠というと感じ悪いかもしれませんが、自分の労働データを保存・整理しておくということです。
将来的にフリーランスになったときにも役に立つので、データを取る習慣を付けておくのをオススメします。

タイムカードはコピーする

写メでもいいです。オンラインアプリを使っている場合は、データをCSV等でダウンロードできると思います。スクショでもいいですけど。当然ですが改ざんはNGです。NGどころかThe ENDです。

タイムカードの不正を強いられている場合、スケジュール帳やスマホに日々の出勤時間、退勤時間をメモっておくのも有効です。

給与明細も取っておく

何の手当が含まれており、何の保険に加入しているのかが記載されているはずです。万が一記載されていなくても、金額から残業手当が含まれている、いない、あれ?そもそも社会保険(健康保険)に加入されてないぞ??などが分かります。これも保管しておきましょう。

残業時間

ちゃんと払ってもらえて体力があるなら、ガッツリ残業してガッツリ稼ぎたいときもありますよね。それにしても月何十時間と超えて働いていると過労死の危険性が出てきます。ほどほどに。

サービス残業

なんと残業や休日出勤したのにその分の給料が出ないことがあります。おそろしいですね〜〜。
私は過去に時給750円の職場を辞めた後、労基署に相談しサービス残業分の未払い賃金80万を取り戻したことがあります。その未払い賃金の額もタイムカードの数字から労基署の職員さんが算出してくれました。

重ねて書きますが、タイムカードのコピーは忘れずに。

みなし残業手当

ちょっと脱線しますが、みなし残業手当は月○○時間分は働いた分として(残業しなくても)給料に加算するという社独自の制度です。デザイン会社ではよく見る手当ですね。
冷めた言い方をすれば、素の給料が低いのを誤魔化す、基本給を下げるための制度です。「え〜、働いてない分ももらえるなんてラッキー!」なんて思わないように。

残業代を請求するのは悪ではない

うまーーーーく洗脳してくる会社もありますが、就業時間内に作業が終わらないのは仕事の割り振りをマネジメントできてない会社側の問題でもあります。
そもそも会社が法律違反を犯してるのに、なんで労働者側が悪く言われるだって話です。

給料は曜日・時間帯で増える

各会社の就業規則で定められていますが、例として以下のように割増になります。

割増額
22時〜5時まで 基本給×25%
法定休日(※) 基本給×35%
月60時間以上の法定労働時間外労働(※) 基本給×50%

法定休日:社規定の休日。曜日は関係無いが大体日曜日。

法定労働時間:1日8時間、1週40時間。業種や従業員数が少ない職場などは週44時間の場合も。

この割増は重なってかかります。例えば、法定休日の深夜帯で働いた場合は、基本給×(25%+35%)となります。

給料が支払われない

これはヤバい、ガチでヤバい状況です。
倒産間際にせよ、騙してタダ働きさせてるにせよ(デザイン系では引っかかることがないシチュエーションですが、ハローワークの前で声をかけてくるとこは危ないです。なぜハローワークを通さないのか考えてみましょう)、労基署に駆け込んでも回収に労力がかかると思います。気合入れましょう!

自爆営業

以前は郵便局の職員が年賀状やお歳暮等の営業ノルマを課せられていて問題になりました。売った数は表で局内に貼り出されます。ノルマを達成できないと自分で買うことを強いられていました。現在は改善されていると中の人たちから聞いています。
コンビニチェーンでも、恵方巻きやクリスマスケーキをバイトにまで買い取らせる(食習慣や戒律の異なる外国人従業員にまで!)ことが現在進行形で問題になっていますね。これもやはり記録しておきましょう。
皆で「おかしいぞ!」と言うことで郵便局のように改善されていく可能性もありますしね。

有給休暇を取得すると文句を言われる

これは会社が悪いです(もちろん事前連絡・業務の調整も必要ですが)。
「雇い入れ日から6ヶ月継続して勤務し、全労働日の出勤率が8割以上」の場合、有給休暇が発生します。転職を気軽にすると、そのたびに最初の半年間は有給休暇が存在しないので気を付けてください。
たまに勘違いして覚えている会社もありますが、有給休暇の理由も細かに会社に伝える必要はありません。「私用のため」でOKです。
「フェスに行く」「友達と遊ぶ」「ずっと追いかけていた映画シリーズを公開初日第一回目を映画館で観る」「家でゆっくり寝ていたい」
問題ないです! 休暇をどう過ごそうとそれぞれの勝手です、それぞれの人生です。ケチを付けてくるような社風なら、その社風を変えるべきです。

休憩時間

うっかりやりがちですが、「8時間労働でいつもの昼休憩の1時間を削って働きました、給料増やしてね」というのは、ややこしいことになります。
会社側には社員に休憩時間を取らせる義務があります。この休憩時間も労基法に定められてるんですね。善かれと思って働いて会社に法律違反させてしまったことになります。
休憩時間は休憩時間として、お互いしっかり守りましょう。

タバコ吸う社員だけタバコ休憩を取ってズルい

これは労働法関係無いのですが、発生しがちな不満です。
私の意見では、タバコ休憩の時間とタイミングって休憩として非常に丁度いいので(コミュニケーションも取れるし)、タバコを吸わない社員も同じように休憩を取れる空気にしたらいいと思うんですけどね。
前職の会社では「就業時間内タバコ禁止」になってしまってましたが。

空気に飲み込まれない

「経営者目線を持って」

持たなくていいです。これを言ってくるとこは労働者側の立場に立つ気がない会社であることが多いです。
以前いた会社でこの言葉がよく聞こえましたが、結果同僚同士で「あいつは仕事ができない、クビにしろ」「俺なら○○部署は潰す」とヘイト感情が煮詰まり社内の空気が悪くなるだけでしたね。

会社に変に情を持たない

「私が支えなければ!」なんて経営者・管理者でもないのに思う必要は無いです。ただの一社員。辞めたら他の人が雇用されるだけです。
あなたが心や体がボロボロになっても、会社は次の人を雇用するだけです。残るのはボロボロになった自分だけ。
頑張りたい案件があったりしますが、継続してそれをやっていけるのか将来的な視野を持ちましょう。

自分を卑下しない

自動車ならオイル交換、タイヤ交換、ガソリン補給、洗車……日々メンテをして快適に走れるようにしますよね。
人もそう。栄養バランスの取れた食事をする、ちゃんと睡眠を取る、遊んでリフレッシュする……自分自身をメンテして快適に生きて働けるようにしましょう。車に「メンテするな!ガソリン欲しいだなんて生意気だぞ!でもキビキビ走れ!」なんて要求したら頭おかしいじゃないですか。おかしな要求は突っぱねましょう。
(おかしな要求をしてくるということは、その人自身もおかしくなっています。「おかしい」ことを理解してもらって健康的な状態に戻ってもらいましょう)

疲弊すると判断力も鈍ってきてしまいます。まずは自分で自分を大切に。

解雇と雇用保険(失業保険)

突然会社から「明日から来なくていいよ」と解雇を告げられた場合、その日から30日分の給料を支払う義務が会社に発生します。
(会社は従業員に解雇を告げる場合、30日前までに告げなければならないと労基法で定められています)
当然会社も支払いたくないのでうま〜く自己都合退職の流れに持っていくかもしれませんが、会社都合での解雇の場合、半年以上雇用保険に加入していれば3ヶ月の待機期間なしで失業保険を取得できます(生活費が困らない!)。
転職時の面接でこの「自己都合退職」か「会社都合の解雇」か面接で触れられるかもしれませんが、「会社の経営上の問題で」「プロジェクトが途中で終了してしまって」で済む話しじゃないですか。
解雇を告げられショックとは思いますが、冷静に対処しましょう。

書いていて思い出しました。前の前の(前の前の)職場でアルバイト勤務時これをやられましたね。その時は「仕事無い職場より次行こ、次〜!」とポシティブ&無知に流してましたが。
そのポジティブさが良かったのかその後社員として雇われることになるので、立ち居振る舞いは難しいところですね。。

雇用保険に加入してない会社だった

週20時間以上働いて、31日以上の雇用の場合、会社側に雇用保険に加入する義務が発生します。会社側が意図的に雇用保険未加入なら、ハローワークに相談しましょう。
「離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上あること」が該当する場合、失業保険を貰うことができます。遡って加入&保険料を支払う(会社と本人が双方支払う)ことで、失業保険申請の手続きへ進めることができます。

失業保険

普通に辞めても関わることになる失業保険ですが、会社の方でも手続きが必要なので、失業保険の取得に必要な書類を発行するまでに数週間ほどかかります。
すぐに郵送してもらえないからって詰めないようにしましょう。

年金・社会保険(健康保険)に加入してない

会社ができて日の浅いところなど、まれに年金や社会保険(健康保険)に加入されていないことがあります。
週の所定労働時間が20時間以上、賃金の月額が月8.8万円以上、2ヶ月以上雇用される等の条件を無視している状態です。トライアル雇用のまま、雇用条件を改めずこういう状況に陥ってる場合が多いかと思います。
もちろん労働者側としても迷惑なのですが、会社側としても違法行為をはたらいている状態なのでソーッと「ヤバいっスよ」と伝えてみましょう。

労基法が守られてない契約で雇用されてしまった

もちろんんそんなの無効です。
でも「イェーイ!」と契約書を破ってはいけません。そんな契約書を用意してくる会社、だいぶクセモノなので証拠として保存しておきましょう。

ハラスメントがエグい職場に就いてしまった

モラハラでもセクハラでも社内に存在している時点でその会社はダメです。人生の日々をクソ野郎と過ごして無駄にしないで転職しましょう!
って、皆がそんな気軽に転職できないですよね(私はそれで逃れてきましたが)。実は労働基準法でハラスメントについて規定されていません。弁護士に相談することになると思いますので、やはり録音したり記録を取りましょう。ストレスで医療機関を受診した場合も診断書をもらいましょう。とにかく証拠を集めるのが重要です。

中高年以上では意識が低いのですが、女性から男性へのルックスジャッジ、性的冷やかしも当然セクハラです。これからの世の中に対応してもらわなきゃ。学んでもらいましょう。

暴力を振るわれる場合は、真っ直ぐ警察に行きましょう。

社会保険労務士(以下、社労士)が出てきた〜〜!

社労士は会社に雇われているので会社側の味方です。あなたに非があるように言ってくるかもしれません。しかし社労士もピンキリです。専門職だからといって言ってることが全部正しいわけではないです。ビビらないようにしましょう。
嫌な感じの人だったら何を言ってきたか記録(録音)して、気になることは労基署で相談しましょう。労基署の職員さんの方が正しい知識を持っています。

もっと気軽に労基署に行こう!

会社から「お前は何も知らないだろ、こっちが正しいんだ! 文句言うな!」的なことを言われたら、「OK! 労基署! 職場でこんなこと言われたんだけど正しい?!」と朗らかに相談に行くくらいが健全です。
一応、事前に会社に「労基署で聞いてきまーす! 後でナレッジ報告しますね」と伝えましょう。それだけで態度がガラッと変わって愛想笑いを振りまいてくることもあります(ありました)。

とにかく会社がムカつくから刑事告訴されてほしい!

OK。その気持ち、とてもよく分かります。でもちょっと落ち着いて。確かに労働基準法違反は犯罪ですから、悪質で証拠も揃っていれば会社を刑事告訴してもらうことも可能です。しかし、刑事告訴になった場合、サービス残業等の支払い手続きはストップしてしまいます。それ狙いで会社側が挑発してくることもあります。
また、よーーーーっぽどじゃない限り憎きアイツを刑務所にぶち込むことは難しいです。
労基署の職員さんにも相談して、アドバイスをもらいましょう。
労基署に指導される時点で会社側は冷や冷やするみたいですけどね。

礼儀は持とう

本当に嫌な相手だったり、メチャクチャ嫌な目に遭ったりしたら、そりゃ冷静に礼儀正しくふるまってなんていられませんよね。プロレスなら「この野郎!」と乱入しても盛り上がっていいんですが、労基法に関するやり取りで暴力は一発退場です。裁判ドラマでも見て落ち着きましょう。
また、会社側があまり知識が無い場合も、「はぁぁ?! こっちが正しいんだ! こんなことも知らないのか!」と見下したり傲慢に振る舞うのも、人としてちょっと違うんじゃないかと思います。
Google MAPにネガティブコメントを書いたり、5chに悪口書いたりもやめときましょうね。……って言ってる自分自身が転職情報サイトにネガティブコメント書き込んだのを思い出しちゃった(頭抱えてる)。実際おすすめできない会社だったし、いっか。