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私もこの町に暮らす
近年ワーケーションが「新たな旅のスタイル」として注目されていますが、私のようにワークの比重に重きを置いている人間にとってはワーケーションは「住んだ町が増えていく」感覚です。
この町に住んで、この町の日常の時間に、私も日常を過ごす。
移住体験ってまさにその町の日常を体験できる素敵な企画なんですが、今回私は北海道の真ん中にある大雪山系、その北側にある上川町の移住体験に応募しました。
なぜ上川町か?
シンプルな答えは、移住体験をやってたから。
いやいや、移住体験だけなら他の町村もやっています。
これまで私にとって上川町は、オホーツク紋別へ向かうときの、あるいは旭川から阿寒湖に向かうときの通過地点。あるいは、滞在したと言えるのか、高原に天国のようなサウンドシステムを組んで石野卓球らを招いて年一開催しているKAMIKAWA OTO PROJECTに参加しているくらい。市街地なんて足を踏み入れたこともありませんでした。
知らないで終わらせるなんて、つまんねー!
コロナ禍の閉塞感や年齢的に友人知人があの世に旅立ちまくったりで、自分は人生を逆算して「やりたいことやって生きようぜ」と考えるようになりました。
今の会社は完全リモートワークです。住む場所に縛られなくなったこともあり、建物が密集した札幌に疲れを覚えていたことも影響しました。
「ネット環境があればどこでも働ける」→「動ける」→「行ける!」→「行くわ!」
今回、体験するにあたり季節も考慮しました。
いきなり道北の冬に移住体験したら泣いちゃうよね。
豪雪地帯なんでしょ? すんごい寒いんでしょ? 氷点下二桁? いやいやいやいや……いきなりは無理です。まずは穏やかな秋で体験させてください〜!
上川町の立地
北海道の真ん中に2000メートル級の山が肩を寄せあってる大雪山系、その北側に位置します。層雲峡のある町というと話が早い。石狩川の源流もこの上川町にあります。町の面積はとても広く、ほぼ山。
石狩川に沿って平野が東西に広がり、西側の開けたところにコンパクトに市街地があります。市街地は碁盤の目状に道路が通り、ひととおり歩いて行けるため、なんとなくシムシティぽい町です。
旭川からも車で1時間弱、札幌からも高速使えば3時間かからないくらい。北海道の感覚としては「近い」範囲。
周辺も、春は滝上町の芝桜、夏は北竜町のひまわり、秋はいたるところが紅葉、冬はオホーツクの流氷、音威子府だって2時間ちょっとで行ける。道東・道北観光の拠点としていいポジショニングをしています。
移住体験:普通に住んでた
ワーケーションというと、アクティビティとかワークショップとかやるじゃないですか? キラキラと。恥ずかしながら金欠だったこともあり、私はそういうのは一切しませんでした。
黒岳のロープウェイは乗りたかったけど、山が冠雪したのを見て「寒そう」と瞬時に断念。
また、上川町の移住体験なので基本的に上川町で過ごします。渡される説明書にも注意書きがありました。音威子府に行って帰ってきてから読んじゃった……。すみません。
移住体験住宅にオフィススペースがちゃんとあったので、仕事はきっちりこなせました。ネット回線も5G対応してたので全く問題なく過ごせました。
昼休みにさくっと層雲峡にドライブに行けるのも、上川町に住んでるからこそ。日々急速に深まる秋(道北・道東は季節の切り替わりがメチャ早い)、終わりかけの紅葉も、柱状節理の岩壁の上に暗い紅葉の葉と白樺の幹とのコントラストがキマッてエキゾチックな景色になっており、これはこれでカッコいいなぁと。
田舎は日が暮れたら即夜なので、仕事終わりにスーパーやセイコマで買い物して夕食・飲酒、そして早寝。結果、早起き。健康的! 札幌だと2時3時まで寝付けないのにね。やはり都市部は神経がたかぶってしまってるのかな。
役場の職員さんにも入退去のときしか会わず、放っといてくれたのも、「普通に住んでる」感が増してよかったです。
子持ちファミリーとか事業起こすようなアクティブな都会人とかなら色々あったかもしれないけど、アラフィフ子無し一人暮らしなんで…ねえ。
良かったとこ
町の雰囲気がおだやか
田舎町って、ぶっちゃけ排他的で雰囲気悪いところもあるじゃないですか?(私の故郷とかなかなかですよ) 上川町はおだやか。町がコンパクトなこともあり基本歩いて散策しましたが、車が先に行くタイミングでも止まって道を譲ってくれたり(しかも3度)。豪雪地帯で隣の家との間隔が空いているからギスギスしないのかな?とか考察してみましたが、どうだろう。
ゴミの分別が細かくない
広域で立派なゴミ焼却場を構えてるらしく、プラゴミ等も燃えるゴミにまとめて出せる。楽!
プラゴミとか細かく分別させる自治体の場合、結局皆どろどろの汚れたプラゴミを出すもんだからリサイクル原料にもならないし、手間なだけじゃないですか。あのモヤモヤから解放されてるっていいですよね。
町立の施設も◎
総合体育館もなんと50円で利用できます。トレーニングルームはそんな広くはないけど、ひととおり体を鍛えることができました(初回に、職員さんからマシン利用の講習を受ける必要あり)。
郷土資料館も◎。明治・大正・昭和とこの地に入植した町民たちの生活、仕事の道具が展示されていて、これが最高にエモい! キレイなフェイクが溢れる世の中ですが、リアルの質感・存在・モノに残る記憶ーー。くらっちゃましたわ。こんなにくらって入場無料。マジか……。上川町に滞在した人は一度は行った方がいいと思う。お昼時間は閉まるのをちゃんと調べずに行っちゃったんですが、今度はゆっくりじっくり滞在したいです。
医療センターもあるのも安心ポイントですね。
層雲峡まで行かなくても普通に紅葉がきれい
旭川を北に抜けて愛別から上川まで下道もほぼ信号機が無く穏やかな道なんですが、なだらかな丸っこい山々が北海道らしい黄色い紅葉のパッチワークで色取られて、この光景がとても好きなんですよね。地元の人的にはいつもの光景らしいんですが。
上川町入りしたのはちょうどそのあたりが紅葉がきれいな時期でした。市街地からも常に山が視界に入るので、紅葉の国に来たような感覚になりました。
木造の家とはこういうものだと再認識できた
移住体験住宅は一つの家の中を壁で仕切って司法書士事務所と隣接していました。
木造なのでどうしても隣の音はお互い聞こえてしまう(日中しか聞こえてきませんでしたが)。世の中の長屋住まいや木造アパートに住んでる人、皆音に気をつかってるもんね。。
あと、寒い! 体験住宅には部屋が3つくらいあるんですが、空間が繋がっているため一部屋だけ温めるということができない構造でした。暖房費も家賃に含まれていても自分一人のためにストーブがんがん炊くなんてエコじゃないじゃないですか。1箇所だけ19度設定でストーブを着けてましたが、変な痩せ我慢をせずにもうちょっと暖かくしてもよかったかな……。住んだら暖房費もちゃんと考える必要がありそうです。
こういうことって住んでから気付くよりも、事前に認識しておきたいことですよね。
タヌキを見た
実はこれまで野生のタヌキを見たことがありませんでした。私の父なんか「タヌキ」と聞くと「肉が臭くて美味しくない」と即答するような、結構な田舎で育ったのに(なんで食い物としか見てないの)。でも、東京生まれ東京育ちの東京の大学生が「タヌキなんて珍しくないですよ」と言ってたので、今はタヌキの方が都会っこなのかも。
が! 大雪森のガーデンの帰り道、もこもこしたタヌキ2匹と遭遇! 初めは子熊やアライグマだったらヤだなと警戒していましたが、確かにタヌキ。か、か、かわいい〜〜〜〜〜〜! ちゃんと車が来たのを察知して道路から逃げてるところも良き。ニンゲンに関わっちゃダメよ、その調子で生きてって。
まぁまぁだったとこ
実際に住むとしたら住居の選択肢が少ない
これは町の問題ではないけど、どうしても田舎って一人暮らしが住む想定がされていません。
住むとこを検索で探してみたけど、自分の場合年齢的にも人生ステージ的にも町が用意している制度には全然引っかからない。賃貸も、あっても3DKと広い😅。友達が遊びにくる前提で広いところを借りる手もあるかな〜〜。でも札幌と同じ家賃か……。まぁ、普通移住してくる人なんて家を買うような金持ちなんだろうなー、なんで私は金無いのかな、氷河期世代だから? いやあんま関係ないな……うーん……と、調べながらどんどん凹んでしまいました。
コワーキングスペースが兼コミュニティスペース
これも田舎はそりゃそうだよねって話ですが。町にあるコワーキングスペースが上記のとおりで、本棚で仕切られてはいるんだけども何かイベントがあったりするときに会話が丸聞こえになってしまうという。「これって、よそ者の私が聞いちゃダメなんじゃないかな〜〜〜〜!?」と気になって長居できませんでした。
まぁ、むしろコミュニティスペースのおまけでコワーキングスペースがあるので、文句言える筋合いもない。利用時はイヤホンとかマストかな。
追記221030:スペースの方にご連絡いただきました。2階にコワーキングスペース利用者専用のスペースがあり、会話が気になるときはそちらも利用できるそうです🙏💦
ちょっとドライブすると車の前面が虫の死骸だらけに
これは北海道全域のあるあるですね。
車を走らせていると「晴れてるのに雨かな?」ってくらいフロントガラスにピシピシピシピシ虫がぶつかります。ぶつかるというか、虫からしたら穏やかな天気の下、気分良く飛んでたのに巨大な物質が高速でつっこんで殺戮されるという不条理な世界なんですが。景色はいいのに己の罪深さに凹んできます。
コイン洗車場で虫の痕を落とすまでが北海道のドライブです。
今年のAdobe MAXのオンライン参加は上川から
唐突になぜAdobe MAXの話題が?と思われたかもしれませんが、Adobe MAXのセッションでLightroomの使い方をちょっと覚えて、町の写真を加工して遊んでいました。
あんまりヨソ者が町のあちこちを撮影してると町の人を不安にさせてしまうので、このくらいしておきました。
KAMIKAWA OTO PROJECTの開催場所にも行ってみました。秋なので「大雪森のガーデン」はもう閉まっており近場から。大雪山がかっこいい。フェスのときって毎回雲やガスで見えなかったんですよね。来年は晴れて卓球にもこの景色を見てほしいな〜〜。
かかった費用
家賃 | 16,000円(2,000円/日。泊ではなく日計算なので8日分) |
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交通費 | 7,880円(期間中のガソリン代、高速料金) |
施設利用料金 | 850円(町立体育館、コワーキングスペース、アトリエ3モア) |
飲食費 | 17,729円(酒代込み。結構いっちゃってた。。) |
おまけ:中長期滞在であった方がいいもの
- スリッパ
……行ってみないとあるのか無いか分からない。100均のペラいのでOK。 - 手拭い
……タオルでもいいけど、かさばらず乾きも早い手拭いの方が好み。複数持っていけば、乾燥対策に掃除にと状況に応じて使い分けができる。 - Bluetoothスピーカー
……スマホやPCのスピーカーだと解放感がないので。 - 水筒
……お湯を沸かしたあと入れておける。わざわざ毎回沸かさずにお湯が飲めるぞ。 - 洗濯ネット
……使わない人はともかく。突発的に洗濯したくなったときに。 - ランタン
……部屋の照明を薄暗く調整ができないときに。コンパクトになるタイプだと◎。 - 収納ケース
……車移動前提で。大きくひとまとめにすることで入退去時の荷物の移動が楽。
別件:今回理解したこと
個人的によく耳にする「上川アイヌ」。平取町みたいに上川町にアイヌがいっぱい住んでると思ってたんだけど、上川地方に住んでるアイヌの総称でした。人に言う前に気付いてよかった。。
追記:冬の上川町に行ってみた
移住体験から一年ちょい経ち、旭川の友達のところを訪ねたついでに上川町に再訪しました。お目当ては「k branch」というカフェと層雲峡の日帰り温泉です。
12月中旬なので上川町はもう真っ白だし当たり前のように真冬日でした。
インテリアも扱うおしゃれな店内を堪能し、料理を堪能し(カレーの付け合わせの野菜から当然カレー、ケーキに至るまで一々美味しい)、お皿やカップといった陶器も素敵だし、「上川町に住めば通えるね」なんて話ながらランチをエンジョイ😊
また、移住体験のときは行けなかった層雲峡の日帰り温泉にもようやく行けました♨
「ホテル大雪」に行ったらホテルが立派&素敵! 宿泊客がやってくる15時前に行ったのが大正解で、静かな館内を移動し雪の層雲峡を眺めながらゆったり露天風呂を堪能できました。眼下では氷瀑祭りの会場作りが進みつつあります。氷瀑祭り、行ってみたいんだけど氷点下二桁のなか外を歩くとか考えたくないんで難しいんだよな〜〜。
層雲峡温泉は北海道有数の温泉地なこともあり、15時以降は大型バスが何台も何台も各国の団体客を運んできて夕方にはそれまでの静けさとは一転、とても賑やかなホテルと変化していました。ホテル内には本格的なパン屋さんもあり、クロワッサンもシナモンロールもそれぞれの美味さを追求して焼き上げたゴージャスなお味。自分への良いお土産になりました。